別の話

僕の家にて。ハロー、変な憂鬱。

大沢君は、お酒を飲むとつっかかってくる。けんかになる。お酒を飲まなくても、よくけんかになる。どうも僕や他の人の行動が気に入らないらしいのだ。僕がハーフパンツをはいて学校に行った時は、「お前こんな暑い日にハーフパンツなんかはいて、ちゃんと汗…

研究室にて

ミドリ君が窓から何かを見ている。一点をみているようなので、何かを見ているのだろう。ミドリ君は何かを考えて目を開いているときは、目は小さく痙攣するように動く。脳の中の何かを見ているのかもしれない。 僕はミドリ君の視線の先を見てみた。そこには中…

研究室にて

「僕のパソコン壊れちゃいました・・・」 斎藤君のいるほうから、斎藤君の悲痛な声が聞こえる。モニタとその上に乗っている紙なんかで全く向こう側が見えないので、その顔は見えない。 「壊れたって、どうなったの?起動しないの?」 「ええ、起動は、しない…

研究室にて

大学の正面玄関の正面の公園のその並木の向こうの道をこえた所、つまり大学の正面から公園をつっきりまっすぐ歩いたところに、酒井酒屋がある。酒井という苗字の人が経営する酒屋だ。そこで僕とミドリ君と、僕らと同じ研究室の斎藤君と一緒に酒を買いにいっ…

廊下にて

ミドリ君と一緒に研究棟へ行く途中で、はじめてみる男がこちらへ近づいてきた。どうも、かなり近づくまで僕のことが目に入っていなかったらしく(ミドリ君しかみていなかったらしく)、彼は、僕らのすぐ目の前にきてからやっともう一人いることに気がついた…

カフェにて

「そうだ、デカルトの分だけ出席してないんだった。ミドリ君、持ってる?」 「はい、デカルト」 デカルと大先生も、こんな風に自分の書いたものがポンと人に渡されることは予想できなかっただろう感じで、あまりにも軽く僕に数ページの紙切れが渡された。た…

ぼくはおやじの横でお茶をすすりながら、今日ここにきたことを不覚だと思い始めていた。 これを飲んだら帰ろう。おやじに対するもやもやした、ぐちゃぐちゃした、感じ。いま解消できるわけもない。今回は失敗だった。とにかく、自分のほうから訪問していると…

カフェの隣の休憩室で教科書を広げながら高校野球を見て談笑する人たち。ぼくは、通り過ぎた。どうしてこうなのかな。 三界の窓から見下ろした中庭に、猫がいた。ぼくは階段を早足でおりて熱地獄への扉を開け、中庭へ出た。しかして、猫のいそうな日陰を、見…

まだ7時である。もうミドリ君とは別れてしまったのでやることがない。別れたといってもつきあっているわけではない。恋人と別れることを「別れる」と表現することがかなり一般的でまたよく使われるので、普通に人と別れた時にどういえばいいのかよくわからな…

はじめ。

今日の朝も、割りと早い。8時起床。9時からのアルバイトのためにこの時間に起きる。アルバイトをはじめてから一ヶ月くらいの間、この時間に起きるのはかなり苦痛だったが、このごろは楽だ。慣れるというのはたすかる。慣れてはいけないこともある、なんてい…

おやじの話は後で書くとして、ラーメン屋から200メートル先にある駅までミドリ君を見送る。 「若いカップルが多かったですね」 「そうだ、boy meets girlsって、ありきたりな恋物語って意味らしいよ。男の子と女の子が出会えばだいたい恋が生れるからだって…

私は、昨日、酔っていた。加速度的に私の中で、オセロのように理性君がひっくり返されていった。盤面が理性君の裏の「本能君」ばかりになっていたとき、1つだけ残されていた理性君が「時間を気にするように」と忠告をくれた。そのおかげで終電に乗ることがで…

コツコツコツコツ、歩いている。学校から駅まで約12分の道のり。私はよく、自分の体の動きを意識する。リズムを大切に、姿勢も大切に、時には頭から上へ糸で引っ張られているように意識して、歩いてみる。体が自分の思ったとおりに動くというのは気持ちがい…

第二回 私=女

私は、併合した。媚びへつらったと言ってもいいだろう。少なくともあの瞬間以前の私なら、今の私をそう評価するに違いない。ということは、私はこの数時間で変わったという事になる。たったあれくらいのことで?少し、自嘲。私は、自分で自分のことを笑うの…

日記

今日は3つも犯罪を見た。 1つ目は、携帯のカメラで雑誌等の情報を盗む、いわゆるデジタル万引きである。中学生くらいの女の子が、書店の雑誌コーナーの1番端っこで、地域情報雑誌を片手に持ち、もう一方の手で携帯を持って、写真をとっていた。バシャッっと…

私=女

私は、今日も、誰とも喋らなかった。これはどういう意味をもつかというと、ある人は友達がいないと言うだろうし、ある人は人間嫌いだというだろう。私には、今日私が誰とも喋らなかったことにどういう意味があるのかはわからないが、その状態をどう評価する…

5

はじめのうちは場面がころころ変わるが、容赦していただきたい。否、もしかしたら終りまで(終わりがあればの話だが)しょっちゅう変わるかもしれないが、物語にこういう手法はつきものだ。いわゆる、「おりしもそのころ」的な手法である。 このあと(どれく…

4

ゼミが終わり、一辺約五メートルの正方形に近い小さな教室で、西之倉大地とゼミ教官の永井忠正が二人きりになった時だった。 「西之倉君は本が好きでしょう?図書館でバイトしてみない?」 電源ケーブルを紙袋に片付けながら、永井が言った。少し唐突である。…

3

1人でいるのと、2人でいるのでは、かなりの違いがある。 2人でいるのと、3人でいるのとでも、決定的な違いがある。 しかし、3人でいるのと4人でいるのでは、大した違いは無い。 そして、人が3人以上集まった場合、よっぽど人選を吟味しない限り、それぞれが…

2

待ち合わせをしていた。だから会える。 何時に、どの場所で、という約束があったから会える。 しかし、それほど厳密ではない。場所も時間も、ある程度の曖昧を許容するからだ。もちろん人間が、である。 時間と場所が2つの線で、それが交わる地点が待ち合わ…

1

歓びというものは、いつも、より多く求められるものでありながら、ある臨界点を超えると、とたんに煩わしいものに転化する。快楽が少なすぎれば不満が昂じるのに、いったん飽和状態に達すると、快楽そのものが苦痛に変わってしまう。歓喜に酔いしれたあとに…