研究室にて

ミドリ君が窓から何かを見ている。一点をみているようなので、何かを見ているのだろう。ミドリ君は何かを考えて目を開いているときは、目は小さく痙攣するように動く。脳の中の何かを見ているのかもしれない。
僕はミドリ君の視線の先を見てみた。そこには中庭で事務の石井さんが猫にエサをあげてる風景があった。石井さんは30歳くらいの男性で、なにかを頼みに行ってもいつも愛想がない。僕は彼の声は「わかりました」しか聞いたことがない。
「へぇ、石井さんって本当はやさしいんだね」
うかつにも、僕は言葉を吟味しないで口から出してしまった。
「じゃあ、嘘は?」
「ミドリ君。この場合の「本当」は、「実は」の意味で使われている」
「ふーーん」
どうも暑いと会話にならない。いや、暑くなくても、どうだろうか。とにかくあまり楽しくはない。