カフェにて

「そうだ、デカルトの分だけ出席してないんだった。ミドリ君、持ってる?」
「はい、デカルト
デカルと大先生も、こんな風に自分の書いたものがポンと人に渡されることは予想できなかっただろう感じで、あまりにも軽く僕に数ページの紙切れが渡された。ただのテストのためのノートであるから当たり前なのだが。昔はこんな感じだったのだろうか「これが、デカルト先生の論文でございます」「ははっ、ありがとうございます」(両手で受け取り、礼。)たぶん違う。
B定食を食い終わり、一杯だけなら無料のコーヒーを飲んでいる時ミドリ君が言った。
「この音楽、いいですね」
有線で流れてる曲のことだ。僕はこの曲を知っていた。スキマスイッチの「メロドラマ」だ。確かにいい曲である。更にみどり君は言う「この曲、日曜日の昼に食器を洗いながら聞きたい曲ですね」
たしかにこの曲で浮かぶ絵として、日曜の昼の食器洗いというのは、悪くない。だが、食器を洗いながら音楽をかけたことがある人はわかるとおもうのだが、当の洗っている本人にはその音楽はほとんど聞こえないのだ。
「ミドリ君は自分で食器洗ったりするのかい」
「たまには洗いますよ」
たまに洗うらしい。ミドリ君はこの質問の意味にいつか気付いてくれるだろうか。その時赤面したとしたら、かわいげがあるのだが。だがしかし、確かめられることではない。二人は恋人ではないからだ。メロドラマとは、程遠い。別に、嘆いているわけではないが。