はじめ。

今日の朝も、割りと早い。8時起床。9時からのアルバイトのためにこの時間に起きる。アルバイトをはじめてから一ヶ月くらいの間、この時間に起きるのはかなり苦痛だったが、このごろは楽だ。慣れるというのはたすかる。慣れてはいけないこともある、なんていうけど、これは慣れてくれないと非常に困る。
「おはよう!」
言ってみた。意識して無駄な独り言を言うことをたまにしてみる。主にあたまがぼんやりしているときだが。言って、にやけた。やっぱり僕は自分が好きらしい。自覚があるなら、いいか。
支度をして家を出る。自転車で、5分。コンビニに到着。
「おはようございまーす」
まーす、と延ばすのが、礼儀だ。バックスペースで着替えてすぐにレジに出る。いつもの作業。ちっともありがたくはないけど、「ありがとうございまーす」と言う。数えたことは無いが、一日に300回は言うのではないだろうか。
慣れた作業である。時間が流れるのがゆっくりだ。だが、ゆっくりでも流れるので、いつかは終わってくれる。9時間。特に記する事も無く過ぎ去った。夕方5時に、仕事が終わる。もちろんコンビニは開いたままなので、僕の分の仕事が。
「あの、これから時間いい?」
今日はミドリちゃんに声をかけるときめていた。
「ええいいですけど、なんですか?」
「おいしいラーメンあるんだけど、食べに行こうか?」
「行こうか?って、私と一緒に行こうって意味ですか?」
「そうだけど、だめ?」
「だめではないです。行きましょう」
また、失敗したと思った。彼女に対しては一つの意味にしかとれない文を練ってから言葉を発しようと思う。
ラーメンは、普通だった。彼女は言った「普通ですね」僕は「そうだね」と言う他ない。
「ミドリ君さ、コンビニの仕事どう思う?」
「どう思うって、なにがですか?」
「だから、つまんなくないの?」
「なにが〔だから〕なのかわかりませんけど、確かにおもしろくは無いですよね」
「そうだろう。じゃあなぜやってるの?」
「おもしろくなくても続ける価値があると思っているからです」
「つまり、お金のためだね」
「そうですね」
「君、まわりくどいって言われない?」
「言われますけど、回りくどくさせてる原因が私にあるとは思えませんね」
「甘えるなってことだね」
後は忘れた。この後彼女が「そろそろ帰りましょう」と言って席を立った。ミドリ君が「〜しましょう」と相手に同意を求めるのは珍しいことなので、少しだけびっくりした。いつもは「私は〜しますが、あなたはどうしますか?」といった風だ。やはり、まわりくどいと言わざるをえない。
今日はもうやることがないから、家に帰るしかない。いや、昨日のおやじの所へ寄ろうと思う。推定70歳、専業農家、趣味は将棋のおやじ。おやじというより、じじいだろうか。これは、後で書こう。