1-02-01から1ヶ月間の記事一覧

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はじめのうちは場面がころころ変わるが、容赦していただきたい。否、もしかしたら終りまで(終わりがあればの話だが)しょっちゅう変わるかもしれないが、物語にこういう手法はつきものだ。いわゆる、「おりしもそのころ」的な手法である。 このあと(どれく…

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ゼミが終わり、一辺約五メートルの正方形に近い小さな教室で、西之倉大地とゼミ教官の永井忠正が二人きりになった時だった。 「西之倉君は本が好きでしょう?図書館でバイトしてみない?」 電源ケーブルを紙袋に片付けながら、永井が言った。少し唐突である。…

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1人でいるのと、2人でいるのでは、かなりの違いがある。 2人でいるのと、3人でいるのとでも、決定的な違いがある。 しかし、3人でいるのと4人でいるのでは、大した違いは無い。 そして、人が3人以上集まった場合、よっぽど人選を吟味しない限り、それぞれが…

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待ち合わせをしていた。だから会える。 何時に、どの場所で、という約束があったから会える。 しかし、それほど厳密ではない。場所も時間も、ある程度の曖昧を許容するからだ。もちろん人間が、である。 時間と場所が2つの線で、それが交わる地点が待ち合わ…

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歓びというものは、いつも、より多く求められるものでありながら、ある臨界点を超えると、とたんに煩わしいものに転化する。快楽が少なすぎれば不満が昂じるのに、いったん飽和状態に達すると、快楽そのものが苦痛に変わってしまう。歓喜に酔いしれたあとに…