たんぱく質

タバコの火で虫を殺すことをよくやる。無意識のうちに殺していて、何も感じない自分を自覚すると、これはぼくにとってなんでもないことなんだな、ということが変に虚しい。
こういう時、決まって思い出すのが、母が庭で虫を殺した時のことだ。何故かはしらないが、4歳くらいのぼくは、砂利の敷き詰めてある庭に二人で並んで座って、虫を眺めていた。そのうち母が虫眼鏡を出して、光の焦点をアリにあわせると、忘れもしないが、
たんぱく質が焼けるにおいがする」と言った。
この時ぼくは、たんぱく質という言葉と、虫は殺しても良いものだということを知った(のかもしれない)。

何の理由もなく遊びで何かを破壊すると、どうして虚しいのか。
12歳の時、何週間もかけて作った版画を割ったが、あの時も虚しかった。でも、心が平静になった。自分は悪い人間だから、悪いことをやらなければならない、という心理なのかもしれない。いずれにしても、罪悪感には関係するだろう。