ぼくは

高校の時、教科書を全て机の上に重ねて、壁をつくっていた。その方が、引出しにしまっておくよりも探すときの効率がずっとよかったし、壁の上に物を置く事ができるので、立体的にスペースを活用できた。床には段ボールをしいた上に、膝くらいの高さまで自分の本を重ねていた。席がベランダ側にあるときは、窓のさんにまで本を積んだ。毎日図書館に行って新聞を読んだ。本も、貸し出しカードの色が何週もするくらい借りた。
昼休みになると、友人と一緒に「ほか弁」へダッシュした。教員の目をくいくぐるために2回のベランダから飛び降りたり、すぐ脇にある民家を通り抜けた。迷った挙句、いつもからあげ弁当を買っていた。
放課後は美術室にいた。美術部員は大勢いたが、活動しているのは、ほとんどぼくだけだった。だいたい、金属製のイーゼルに馬鹿みたいにでかいキャンバスをのせて、毎日油絵を描いていた。
美術室の半分は漫画部に使用権があった。彼らは「外でするとまんこが凍る」など、想像力をかきたてる話をしたり、腕相撲大会を開いたり、他校の生徒を招いて親睦を深めようとした結果罵りあったりしていた。だが漫画も熱心に描いていた。彼らの使う、「原稿」「締め切り」などの言葉はプロ気取りで鼻についた。
美術室には稀に、ある女の子がぼくを見学しに来る。ある日、その子は友人数人を従えて、ぼくと2ショットの写真をとりにきた。それからは来なかったので、彼女の目的はそれで達せられたのだと思う。