成長とは

小学校の頃の美術の先生が、「寝る前の数時間に何かが生まれるんだ」と言っていたのが忘れられない。この先生は40くらいの女の先生で、漫画を描いていた。今思うと、いわゆる同人誌だと思う。

一日が終わった後の頭の中は、スパークしている。たくさんの言葉や音や景色が、いたるところで衝突している。寝る前に、それを整理しなければならない。抽象的なスパークのまま消えてしまう前に、分かりやすい形に編集して、定着しなければならないのだ。
そのために毎晩寝る前の数時間が費やされる。小さい頃は、だいたい布団に入ってからがその時間だった。いつからか、(おそらく思春期あたりから)その時間がとれなくなるときがあった。だから、それに気づいてからは意識的にその時間を作るようにした。
何も聞かない、何も見ない時間だ。見るのは、自分の頭の中だけだ。
頭の中を整理して、そうやって少しずつ刻み付けて、それを「成長」と呼ぶことにした。

子供の頃は毎日やっていた。その頃は、皆がやっていることだと思った。しばらくして、やらない人のほうが多いと思った。理由は、だんだんぼくもやらなくなってきたからだ。
でも全てやめてしまうことはなかった。
今でも、昔とあまり変わらないことを刻み付けて、それで成長したと思っている。