ビール3本目の夜

かなり以前、ロッキングオンの『H』という雑誌を愛読していた。高校生のあたりだから4年前以上になる。今住んでいるアパートに引っ越してくる時いくつか捨てたが、捨てきれないものはこっちへ持ってきた。それを今日、掃除中に読み返した。当時好きだった浅野忠信とか緒川たまきとか市川実日子が載っているものが多かった。
Hには巻末に、お友達募集コーナーのようなものがある。今読むと、恥かしくて、おもしろい。
『私は人からよく変わっていると言われます。どう変わっているかはここでは言い切れないくらいです。私と恋人にならない前提で文通してくれる方おねがいします』
『はっきりいいます。私は面白いです。文通しても飽きさせない自信があります。男性女性問いません。おねがいします』
自意識過剰の人たちが自意識過剰の人たちと交流する場だ。需要と、供給。
実はぼくも一度だけ手紙を出す側になった事がある。
それは、『NHKアーカイブス』という番組で自主制作の映画が放送された回について、「その映画を観て共感した人は手紙をください」、という内容だった。思わずそれに手紙を出した。ぼくもたまたま見ていて、とても心揺さぶられた回だったのだ。相手は同世代の女性で、たしか住所は横浜だったと思う。何を書いたかは全く憶えていない。返事はすぐに来た。とてもきれいな字だった。
いや、これは返事だったのだろうか。長々と色々なことが書いてあったが、要約すると、つまり・・・私の呼びかけに対して沢山の手紙が来て共感してくれる人が多くて嬉しかった、ということだったと思う。
ぼくは冷めた。何を期待していたのだろうか。

先日書店で、どれくらいぶりだか想像もつかないくらい久しぶりに『H』を手にとった。なぜかとても恥かしかった。coccoのインタビュを少しだけ読んで、一瞬で倦怠に包まれた。すぐに棚に戻した。横では極端に肌を露出させた若い女性が熱心にロッキングオンジャパンを読んでいた。フェスに行くのだろうか、と思った。ぼくは結局一度も行かなかった。