壁薄問題

前も書いたが、ぼくのアパートの壁は薄い。たとえば隣人のテレビの音は丸聞こえである。何の番組を見ているかもはっきりわかる(チャンネルを全部回してもわからないときは、ビデオか何かを見てるということがわかる)。向こうの音声を利用すれば、こっちは音を消してテレビを見る事も可能だ。
これは考え様によっては便利だ。まず1つ、電気代が節約できる(と思う)。
このアイディアだけでも十分便利で、特許すらとれそうな勢いだが(松下電気のアレにも特許があるくらいだから、と風刺をいれてみる)、もう1つ、テレビが故障し、音が出なくなった時にも助かると思う。
その時の問題は、チャンネルの優先権が常に向こう側にあるということだろう。これは不可避の問題だと思われがちだが、例えばお隣さんにこういう話を振ってみてはどうだろうか。
Dの嵐っておもしろいよねぇ」
きっと、一度は見てくれるはずだ。
話を振るのが無理なら、同じ文面の手紙を出しても良い(そこから文通が始まるかもしれない)。
一度見ておもしろいと思えば、二回目もあるだろう。もし無かった時は、残念ながらその番組がお気に召さなかったか、大変おきに召して録画しているかのどちらかだと思う。もしかしたら後者かもしれないので、思い切って「昨日のビデオ貸してくれるかな?」と言ってみることをお勧めする。
無事借りられたとしても、再生してみたら別のビデオだったということもあるだろう(隣人が昨日何のビデオを録画していたか、あるいは見ていたかはわからないからだ)。そういうときは運が悪かったと思って諦めよう。もし「嬉しいビデオ」だったらよろこぼう(そこからビデオの交換もはじまるかもれない)。
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これを見て、「音が出なくなったら新しいのを買えよ」と言う人がいるのはわかる。だが、それができない人もいるということをわかって欲しい。もちろんぼくはできるが。