妄想の時代

学生時代は妄想の時代である。
学生時代は、授業やテストや再テストやなど、決まった時間じっとしていなければならない機会が多い(ひどい時は再々テストや、説教まで覚悟しなければならない)。そんな時は、妄想でもするか、あるいは気持ちよく意識を失うくらいしか、することがない。
だが、そんなにしょっちゅう意識を失うことはできないし、やりすぎると信用や友人まで失う恐れがあるので、もっぱら妄想をすることになる。
意識を失うのと違い、妄想はしっかり意識を保ったまま、真面目な顔をしながらでもできる。時々、目がうつろになったり、よだれをたらしたり、あるいは鼻血まで出す者がいるが(ばればれである)、これは例外であり、ほとんどの人はすました顔をしながら妄想に励んでいる。


さて、妄想をしている時「この妄想の声がみんなに聞かれているかもしれない」と不安になったことはないだろうか。そういう時は、「猫の額って本当に狭いよな」などと急に真面目なこと(そうか?)を考えてみたり、あるいは、妄想の声が聞かれていないことを確かめるために、頭の中で、「校庭に全裸の校長がいる」とか「あ、うんこもれちゃった」などと言ってみたりする。これで周りが何のリアクションも示さなければ、妄想は聞こえていない、ということになる(校長の裸に興味がない、うんこくらいでは驚かない、という可能性もある)。


各人、いろいろな妄想をしたと思うが、ぼくがよくした妄想は、「妄想発表大会」というものだ。
大会が始まると、教室の黒板はディスプレイになり、天から低い声が聞こえてくる。

「それでは本日も抜き打ちで妄想発表大会を始めたいと思います。早速、出席番号順に発表していきます。1番、相川君。君の今日の妄想時間は1時間30分。その半分がおっぱいについてでした。そしてもう半分はクラスのよしこちゃんとあんなことやこんな」


このように、妄想発表大会とは、何もかもばらされてしまうという恐ろしいものだ。
妄想発表大会は打ち抜きで、いつあるかは分からない。しかしぼくだけは今日あるということをわかっているので、事前に賢い妄想をしておく。何もかもをばらされ、クラスのみんなが恥ずかしくてうつむいている中、ぼくの発表が始まる。

「それでは出席番号27番。あなたの今日の妄想時間は2時間50分。その半分が地球環境についてで、4分の1が世界平和について、そして残りの4分の1が友情についてでした」


たぶん、仲間はずれにされる。