黒猫4

久しぶりに山君と飯を食うことになった。飯屋に行くまえにぼくが提案して、2人で例の黒猫を見に行った。
暑いのか、日陰に潜んでいた。そういえば、初めて明るいところで見た。チーカマをあげながらよく観察すると、目の周りが少し腫れていた。まぶたの裏の粘膜が炎症しているのだろう、それがふくらんで外側に飛び出していた。ピンク色が覗けて少々痛々しい。
山君は、「自分も今度ここを通りかかったらエサをあげたい」と言っていた。好きにしろと言った。山君はこの猫のことを他の人にも話すだろう。もしかしたら誰かが飼い主になってくれるかもしれない。
一瞬、大学のそばの喫茶店で飼えば良いんじゃないか、ということを思いついた。しかし、店主のおばさんは動物嫌いなのだった。この猫が看板娘ならぬ看板猫になって活躍する姿を思い描き始めていたのを、急いで消した。
それでも、今日、猫のことを山君に話したことで、こいつが生き延びる可能性が少しでも増えたんじゃないかなと思った。