12歳の日記

宇宙って一体どうなってるわけ?最近そのことばかり考えている。考えたって答えが見つかるわけじゃないけど、考えずにはいられない。前、お父さんに聞いてみたけど、お父さんもよく分からない感じだった。ただ、「皆そういうことを一度は考えるもんだ」と言っていた。試しにお母さんにも聞いてみたら、「そんなこと考えた事も無い」って言われた。
宇宙はきっと、男の問題なのだ。女は宇宙の事より、もっと現実的なことを考えていると思う。でも、宇宙のことも考えた方がいいと思う。人間は地球に住んでいて、地球は宇宙にあるからだ。その宇宙のことについて考えないなんて、自分のことを考えないのと一緒だ。それとも女は自分のことも考えないのだろうか。そんなことは無いだろうと思うけど、どうして宇宙について考えないのか、まるでわからない。宇宙のことよりわからない。こういうのは、わからなすぎて、考えても仕方ないことに思える。1つもわからないことは面白くない。手がかりが無いというやつだ。
きょうも、早めに布団に入って、寝るまで宇宙のことを考えよう。宇宙は不思議なことだらけだ。いつまで考えても、不思議がなくならない。たとえば、地球の外は宇宙だけど、宇宙の外がわからない。それとも宇宙に外なんてなくて、そこで終わりなのだろうか。それは世界の外側の限界ということになるけど、どうも納得できない。内側の限界なら知っている。どんな物でも、ずっと内側は、細胞や原子で、それいじょう内側が無いらしいじゃないか。
宇宙は無限だと聞いたことがある。もし宇宙が無限なら、外側がないことになる。外側がない?これは、まるでピンとこない。つまり、無限がよくわからない。ゲームで体力が無限ていうんだったらわかる。あれは、減らないということで理解すればいいからだ。でも、宇宙が、ぼくらのいる場所が無限って、一体どういうことなんだろう?これはとても変だ。
宇宙を無限なんて言っちゃうのは、人間が宇宙のことをまるでわかっていないということかもしれない。たとえば、丸い地球を何週もしておいて、平らな面が無限にあったと思ってしまうような、そんなひどい勘違いを宇宙にもしているのじゃないだろうか。たしか、アリはそうなんだ。アリはサイコロのまわりをぐるぐる、上へ横へと動いても、ずっと平面を移動していると思っているんだと聞いたことがある。アリには平面しか見えていないんだ。縦と横の二次元に住んでいるから。でもぼくら人間は三次元に住んでいる。だからサイコロが作れるし、地球が丸だとわかる、無限の平面じゃないことがわかるのだ。だから、ひょっとしたら、宇宙も無限の立体で無いかもしれない。それをわかるためには、三次元にいてはだめなのだろう。
夢だ。ぼくは夢日記をつけるようになってから、夢の中でこれが夢だってわかるようになった。ふわふわしたところにぼくはいる。雲の上でも水の中でもない。たぶん、ここは宇宙だ。宇宙は重力が無いし摩擦も無い。だから、一度進むと止まらない。
熱い。これはたぶん、太陽が近づいてきた。避けなくちゃいけないけど、そこでのぼくは、まるで無力。そのままのスピードでスライドしてゆくことしかできない。太陽に入るときっと死んでしまうから、この夢は、人生をはや回ししている夢だと思った。
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しばらくしてから、お隣のおばさんにも、宇宙のことを聞いてみた。そしたらやっぱり、「そんなこと今まで一度も考えたことが無い」って言われた。でも、おばさんは、ぼくと違うことを考えていた。おばさんは、宇宙人が自分をさらいにきたらどうしようってことを、よく考えていたんだ。だからぼくも不安になって、「どうしたらいいの?」って聞いたら、「わかんない」だって。おばさんは、わかんないくせに、ただ怖がってたみたいだ。ぼくは、そんなことは考えても仕方がないと思った。
図書館で本を読んだ。それによると、やっぱり、ぼくらの住む三次元よりも次の次元があるらしい。ものすごく倍率の高い顕微鏡を使うと、その次元をみることができるそうだ。ぼくはこれを知って、細胞や原子が内側の限界だというのは間違いだと思った。内側のもっと内側には、別の世界がある。だから、外側のもっと外側にも世界があるはずだ。それはまだ、人間がわからないだけだ。だからぼくは、宇宙に果てなんかないと思う。でも、無限というのも間違いだと思う。
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そうやって考えているうちに、ぼくは自分の考え方自体に限界があることがわかった。たぶん宇宙は、ぼくの都合なんて関係ない。ぼくが使う「内側」と「外側」って言葉とは関係がないところで、宇宙はあるってことに気がついたんだ。つまりぼくは、宇宙についてはわからないってことがわかったのかもしれない。
わからないことをわからないままにしておけない人たちもいるってこともわかった。そりゃあ神様がいたら、なんだってありだ。ぼくはそれは、すごくつまんないとおもう。
本当は宇宙だけじゃなくて、すべては、ぼくがどう見ているかとは全く関係がないところにあるんだけれど、それについてはあんまり考えなかった。
最近とても女の子に好かれたいと思う。女の子の考えていることは、やっぱりよくわからないけれど。