自分はいつも殺されたいと思っている。
ひとしれず殺される。何の必然性もなく。たとえばこの角を曲がった所で、あるいは曲がる直前に、ばっと誰かが出てきて、すばっと、大きな刃物で僕を袈裟斬りに斬り捨ててくれないかなと期待する。中途半端に苦しむのはごめんだから、とにかくよく切れる刃物を使って、思い切りやってほしい。斬られたら1、2秒時間差で、糸が切れた操り人形みたいに倒れるだけで、それだけで、あとは黙って死んでみせるのに、と思う。贅沢を言えば、この事件の目撃者はゼロで、死後30分は発見されないとなると良い。更に言えば犯人が逮捕されないともっと良いし、警察も「めんどくさいから」とか言って、あんまり捜査しない方がいい。あとは、犯人が僕を殺す動機が「なんとなく」というようなものだったら、それこそもう、はやく殺してくれよと思う。
そういう奴が、次の角にきっと来る。あるいはすでに後ろにいて、そろそろ斬ってやろうとしているところだ。
と、冗談だか本気なんだか分からない事を考えていると、本当にそうだったらどうする?と考え出して「今の嘘ですから」と念じながらダッシュ四駆朗で家に帰る羽目になる少年時代。毎日が一人相撲。