フレッシュな魚屋でありたい

会津へ転勤してきてからずーっと悩んでいる。
以前、ぼくは魚屋のチーフであると書いたが、こちらではサブである。上にもう1人いるのだ。ぼくは、この上司に使われるのが嫌である。どうして嫌なのかずーっとわからなかったがなんとなくわかってきた。
今の上司はずるい。そして頭が良い。バカでずるい上司なら今まで何人かいたが、これは初めてのタイプである。
頭が良い人というのは、自分の頭脳を拡張する道具を欲しがる。頭が良い人ほど、頭で考えていることに対して、自分の肉体1つでは全然足りないと感じるものである。会社を起こそうという人は、そういう気持ちなのかもしれない。
よく「人を使う」と言う。人に上手に使われると、何も考えることもなくただ動いているだけで仕事が終わる。休む暇は一才無いが、その分、効率は良い。でも「人を使う」は、ぼくがやりたい仕事なのである。それがまず1つ。

魚屋の仕事で考えることと言えば売り場計画と仕事の段取りしかない。クリティカルな発想が求められるのは売り場作りの方である。生魚の相場や在庫によって、絶対にこうしたほうが良い、という場面がある。その時に、そういう売り場が造れるかどうかが鍵になってくる。
例えば生イカが15ケース送り込まれた。さてどうするか。これは先日、上司が休みの時に実際にあったシチュエーションである。こうなってくると魚屋さんは楽しいんだよな!と思いながらがんばって15ケース売りさばいた。実際には2ケースは刺身用に剥いて冷凍(後でいつでも使える。また冷凍することで寄生虫が死ぬ)したので13ケース。
そして昨日まったく同じシチュエーションで、この時は上司の指示で、4ケース次の日へそっくり残すことになった。こういうことが嫌なのだ。
生イカは当日売り切りが基本だ。モノによっては次の日でもまぁ売れないこともないが、そんなことを言ったらなんでもありになるので、だめである。重ねて言うが、だめである。
上司の理屈としては、無理に売ると無駄が出るので、残しておいて、その代わり明日の生イカの仕入れを控えれば利益が出てくる、というものである。それも一理あるが、めんどくさいというのが半分だろう。
上司は自分のやり方が一番だと信じている。昔からそうやって利益を出してきたからだ(利益を取る腕には定評があり、職責も魚屋の中ではトップである)。
でもぼくは、そんなこと簡単だ、と思う。それに、毎日新鮮な物を売って、なおかつ利益も出せたら一番じゃない?お客さんに向ける顔がないじゃない?笑顔でいらっしゃいませが言えなくなるじゃない?
そうなると、仕事がつまんなくなっちゃうじゃない。だから嫌なんである。