カエルが鳴いている。かなり大きな音である。ものすごい数がいるということだろう。
また梅雨が来た、と思った。新しい季節が始まるたびにある感慨を持つ。不安定で、諦めを含んだものだ。年を取ることに付随しているのだろうか。
カエルの卵を思い描いた。最後に見たのは8歳くらいだろうか。卵の白身のような液状のつなぎの中に、小さな目玉みたいなものがたくさん入っているのだ。これをバケツに持って帰り、育てた事もある。何度も育てたが、カエルになるのを見える前にいつも居なくなる。それでいい、と思っていた。大人になったカエルはどこでも見れるからだ。



また夏になる。するといくつもの夏を思い出す。
いくつもの夏が積み重なり、新しく迎えた夏のその新しさに、意味はあるのだろうか。
数々の失敗から、何かを得たのだろうか。
積み重ねたことに、意味はあるのだろうか。


何かを言おうとしても、すぐその後の気持ちになれる。
自然に口数は少なくなり、見つめあう時間だけが増える。何も言わないほうが良い時もある、そんな振る舞い方は覚えた。
どんどんずるく、臆病になり、自分を守る方法だけが上手くなる。
そうまでして守る実体があるのか。それは既に確かめられない。