のだめ

ぼくは好きな人と会えるとできるだけ時間を引き延ばそうとする癖がある。要するに、だらだらさせようと必死に画策するのだ。
先日、山君と夕飯を食べることになった時は、「夕飯を何にするか」、ということが決まるまで2時間半かかった。
まず食べたいものが違った。山君は焼き鳥で、ぼくは、もっと洋風なもの、が食べたいと主張した。あまり親しくない間柄であればどちらかが折れるのだろうが、ぼくらは折れる理由が無いので(2人でいてもあまりストレスを感じないということと、いざとなったら喧嘩しても良いと思っているからだろう)、会議をすることにした。しかしすぐには決まらず、立ち話では埒があかないので、2人でぼくの車に入ることにした。もちろんぼくの提案である。
山君が、運転席と助手席のリクライニングを最大まで倒すと大きなベッドになる、ということを発見し、車中泊をしながらの夢の旅話になった。そこからお金の話になり仕事の話になる。しかし、時々、今何を食べたいかの確認は忘れてはいない。
しばらくすると山君が空腹を訴え始めたので、曇っているフロントガラスをホワイトボードにして、お互いの要求を整理することにした。このように、相手が飽きてきた時は気分転換をさせることが重要である。
まずどこまでなら行けるかという点。亀田、新津、新潟、と書き込んでいく。そして何を食べたいかという点。地名のすぐ横に、焼き鳥、洋風、カレー(すぐ近くにカレー屋がある)、と書き込んでいく。ここまでかなり時間が経過していたこともあり、近場ということはお互い了解済みである。だがそこから先の話が全く進まない。山君は少しずつぼくの方に折れているのだが、ぼくが全く折れないせいだ。
だが刻々と時は経ち、山君の空腹度合いもどんどん増して行く。ぼくは、ここでの時間稼ぎはこれが限界と判断し、全てを山君に委ねることにする。すると、やはり焼き鳥という答えであった。ここまでで2時間半である。6時に会ったのに出発したのは8時半を回った頃だった。
ちなみにその焼き鳥屋が酷かった。