たびを

季節の変わり目には昔のことを思い出す。寒くなってきて、秋ってこんなだったよな、と感じると幾つもの秋を思い出すのだ。そしてその度、これってとてもまともなことなんじゃない?と思う。
梨を齧ったりカーディガンを羽織ったりする度にまた同じことができているな、とホッとする。何か新しいことをしてやろうかな、などと企んだりする。
これからどんどん寒くなる。空気は澄んで、全ては乾燥している。なんて素晴らしいんだろう。どんどん研ぎ澄まされていくみたいだ。これで何もしなければ嘘ってものだ。
車に乗ってどこまでも行きたい。1人でどこまでも。後部座席に毛布を積んで、眠くなったらそれで寝るのだ。
そのときのぼくは、誰かと一緒に居たい、なんて考えもしない。そういう弱さからは縁を切って、ただひたすら車を走らせる。
―――
別に旅が好きなわけではない。
あの人と一緒に居たい、あの人に想われたい、そういう弱さを排除したいだけだ。そのアカツキの孤高のぼくは、誰にも知られず出かけることだろう。