壊し屋

ゲームに囚われるのが嫌で、スーパーファミコンのコードというコードを全て切断したことがある。バーコードバトラーを肘打ちして液晶を真っ黒にさせたこともあった。
無機物に無理強いをした後には冷たい時間が待っていた。そういう気持ちになるだろう、ということはわかっていた。でも、そういう気持ちになりたいから壊したわけではない。壊す前の自分に耐えることができないから、それを壊したんだろう。
幻海師範は、「人は自分の気分次第で壊せるものをそれぞれ持ってる。おもちゃだったり、ペットだったり、恋人だったり、家庭だったり、国だったりする。お前はそれが人よりデカい それだけだ」と言った。別に、ただ思い出しただけだから、意味はない。
何もかも滅茶苦茶にしたいと思ったとき、ぼくが次に壊してしまうのは何だろう。スーパーファミコンバーコードバトラーくらいではすまないはずだ。きっと、誰かに大きな迷惑をかけている。だから大人は、何もかも滅茶苦茶になんて、簡単にはできない。