ねこにやさしく

ぼくが働いている店の駐車場の隅にある無人精米所に、小猫が3匹捨てられていた。見つけたのは同僚のSさんだ。「この時期になると毎年ある」、と言っていたが、発情期に関係あるんだろうか。聞かなかったけど。
3匹とも雨で塗れていたから体を拭いてやって、入れも物も段ボールから断熱性のある厚い発泡スチロールにした。でもそれ以上やることがないので途方にくれていたら、店長の措置で、日が暮れるまで店の軒先に「もらってください」の札と一緒に置いておくことになった。このとき16時くらいである。17時半くらいに見に行ったら無くなっていたから、たぶん誰かがもらっていったんだろう。
誰にももらわれなかったら

ぼくがもらうつもりだった。店長から許可が降りる訳も無いのに、そのつもりだった。
何よりも優先されることだ。小猫を助けたいという気持ちを大切にしたい、ということがだ。
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子供の頃は、ただ助けたかった。弱いものから目が離せなかった。
だが今は、あの頃の気持ちを大切にしたい、というところへ目が向いている。それに拘るから、見かけ上、どんどん優しくなっているはずである。
たぶん、優しかった自分を裏切るのが辛いから、拘るんだろう。
また、その時の自分の気持ちが、本当だったからだろう。一点の曇りも無い、純粋なインスピレーションを発揮した瞬間と、見かけ上だけでも同じ事がしたいのだ。
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例えば、もう以前ほど好きではなくなった人に、「好きだ」と言った時。
何を守ろうとしている?