ねこのめ

休日の朝。
病院へ行く前に、牛丼で腹ごしらえしようと思っていたら、ガストへ吸い込まれた。朝メニューののぼりのせいである。誰もいない午前9時のガストで、喫煙席に案内された(ぼくが希望したかせいだが。ちなみに、吸い込まれてもいない)。
ハンバーグ定食を頼もうとしたら、声がかすれた。起きてから初めて声を出したせいだ。店員が、あの人に似ているからではない(でもちょっとはどきどきする)。

無事に食べ終わり、タバコを吸っていると、とても不思議な気分になった。なぜぼくはこんなところでタバコを吸っているのだろう?誰でも時々、そういう気分になると思う。もちろん、タバコを吸わなくても。

では、どこに居たら、そういうことを考えないのだろう。それはたぶん、実家の自分の部屋だ。ぼくにとってあの場所以外は外だということだろう。ではそこへ戻りたいかというと、絶対に違う。むしろ戻りたくない。 当てはまりすぎて嫌になる、といったら良いのか。地に足の着かない違和感のある場所で、今回のような感想を時々持ちながら生きていくほうが、ずっと健全だ。

朝のぼんやりした頭のままガストを出て歩き始めると、後ろから駆けてくる音が聞こえた。振り返ったらさっきの店員だった。あ!と思ったら、やっぱりぼくの携帯電話を持っていた。今日一番どきどきした瞬間である。太陽の明かりの下で見た彼女は、別に、あの人には似ていなかったけれども。