冗談には冗談で返さなければならない

仕事をはじめたばかりの頃、次に何をして良いのかわからないことがよくあった。そういう時ぼくは、「次は何をしたらいいですか!」と聞いた。すると、上司はよく冗談を言った。よく言われたのが、「歌でも歌え」である。
これは何度も言われたが、その度ぼくはどう返せばいいのかわからなかった。いつも、「えーっ!」と困ったフリをしていた(はじめは本当に困ったが)。すると回りの人が笑う。今考えても、これが一番妥当な返し方だったと思う。
他に考えれるものとしては、本当に歌う、というのがあるだろう。でも、ぼくのキャラクタには合わないと思ってやらなかった。なにより、そんなテンションは持っていない。


ぼくの最初の上司は、よく冗談を言う人だったので、それが冗談か本気かの見極めに苦労した。冗談だと思っていたら本気だったりして、そうすると叱られるので、けっこう必死だった。
仕事でのミスが重なると、これ以上叱られたくないという思いから、よく上司にこう聞いていた。
「それはっ、本当ですかっ、嘘ですかっ」
しかし、こうした場合でも、本当のことであれば叱られたので、あまり意味は無い。
そういえば、はじめて「歌でも歌え」と言われた時もこう聞いたのだった。その時は、パートのおばさんが「嘘だよ嘘。歌わなくていいんだよ」と笑っていた。前の職場でのぼくは、そういうキャラクタである。
そこで10ヶ月ほど勤め、今の職場に転勤してきた。そこでのぼくはどうやら一人前として迎えられ、からかわれることもほとんど無くなった。少し寂しく思ったりする。
最近、新入社員が入ってきたので、彼らからかわれているのを見てうらやましい。からわかれたいのに、こんどはぼくがからかう方である。サービスしているなぁと思う。つまり、ぼくもサービスされていたのだな。感謝しなければ。