母親の目

母親に抱かれている赤ん坊は、常に母親とは別の方向を向いているような気がする。
―――
赤ん坊を見ていたら、急に母親がこちらを向いて、ぼくを睨んだ。
きっ、と睨まれたぼくは、驚いて、目を大きく開いた。
2秒ほど見つめ合う。2秒間、母親はぼくを睨み続けた。ぼくは、驚いた目のまま、そこを離れた。
赤ん坊の目は、大きく開かれていた。きっとぼくの目に、母親の顔が映っていたのだろう。子供は目が良いから、それくらい見えるはず。