十得ナイフではない

若いということはそれだけで鋭い。少年ナイフ、というバンドがあるが、絶妙なネーミングだと思う。骨ボーン、みたいなものである。
少年は鋭いナイフで世界を切る。切ろうと思って切るのではない。触れることが、切ることなのだ。少年は、切ることでしか触れられない。
触れて、触れて、触れまくる。切って、切って、切りまくる。自分の内面に触れる。また切る。自分も世界も、ずたずただ。
そして、きれいなものだけが残る。触れられない。切りたくない。でも、どうにか確かめたい。
しかし、両手にはナイフ。
そのとき初めて自覚する。ああぼくはナイフ。