落ちてない大判焼きの緊張

さて(と無い勢いをつける)、大判焼きは外見が同じなので、店の中にいくつかできあがったものが見えたとしても、その中にチーズ味があるとは限らない。なのでいつも、「チーズ味のありますか?」と聞いて、「あります」という返答を得たのちに、「1つ下さい」と注文しなければならない。
ここで注意しておきたいのは、「チーズ味のありますか?」というのが、「お前の店はチーズ味の大判焼きを作っているか?」という意味にとられる可能性がある、ということである。その場合、「1つ下さい」と注文をしても、「今から焼くので5分ほどお待ちいただきますが」と返されることがあり、こうなると、一体何の確認をしたのかわからない。

なので、「チーズ味のありますか?」と聞くときは、身を乗り出し、店の中にあるできあがった大判焼きを不安そうに見つめながら、「あの・・・チーズ味のってありますかね・・・」と聞かなければならない。大判焼きを1つ頼むのにも、演技力がいるのである(実際不安なので、正確には演技ではないが)
チーズ味は人気なので大抵揃えてあるが、無い時もある。その時は、店員は申し訳無さそうに、「いや・・・今は・・・ないですね・・・」と言う。この時ぼくは、「あっ・・・そうですかぁ・・・」と言いながら、チーズ味に変わるものを考える。大抵はあんこ味を頼む。その他は、クリーム味とチョコ味しかないのだ。
あんこも大抵は揃えてあるが、(信じられないことに)無いこともある。その場合、店員は更に申し訳無さそうに、「あんこも・・・今は・・・」となる。
チーズもあんこも無いとなると、そこに揃っているのは、クリームとチョコということになる。あるいは全部クリームか、全部チョコだろう(一体何をやっているのか)。それが初めからわかっていれば大判焼き屋には寄らない。
しかし、一回寄ったものは仕方ないから、クリーム味を頼むことになる。クリーム味なら、クリームパンだと思えば食べられるからだ。チョコ味は、チョコパンだと思っても、チョコパンが嫌いなので無理である(薬を苦い粉だと思っても、苦い粉が嫌いなら飲めない)。

もし、大判焼きの外と中が逆になっていれば、外見で判断できるが、そうなると食べづらいし、なにより作りにくいだろう。あんこはどうかすれば(どうするのかわからないが)どうにかなりそうだが、チーズやチョコは溶けてしまうだろうし、クリームはあまり想像したくない感じだ。