今度は自分が・・・

昨日の夕方、清掃掃除中に業務用の巨大なまな板を落下させた。とっさに足を引いたが、体勢の悪さから避けきれず、左足を挟んでしまった。
その時、足がもげた、と思った。それくらい痛かったのだ。
ぼくはしばらく目をつぶりながら、「うおーう、うおーう」という声を上げていたが、現場にいたパートのおばさんが上司を連れてきた気配がしたので、声を「うぐぐ」に改めた。
すぐに事務所へ連れて行かれ、怪我の程度を確認するため、足を見せるように促された。悶絶しながら長靴と靴下を脱ぐと、左足の親指が平たく潰れていた。上司は、病院へ行こう、と言い、それにぼくはウンウン頷いた。痛くて声も出なかったのだ。
だが、上司が車を用意する間に、なぜか痛みが引いてきた。もしかしたら、たいした怪我ではなかったのかもしれない。これで折れて無かったりしたら、ものすごい大げさな奴みたいではないか。ぼくは、できるだけ重大な怪我であることを祈った。
車に乗ると、ますます痛みが消えてきた。正直に、「あれぇ、なんかあんまり痛くなくなってきました・・・」と言うと、上司は、えっ、という顔をして、「まあ、何も無かったら何も無かったということで・・・」と言って煙草を咥えた。たぶん、安心したのだろう。そういう時には煙草を吸いたくなるものである。
だが、しばらく道を進むと、再び激痛が戻ってきた。
「あのっ!やっぱり痛くなってきましたーっ!」
「えーっ・・・まぁどっちでも診察してもらうから・・・」
これで重大な怪我でなかったら、大げさな奴の烙印は避けられない。

病院でレントゲンをとると、幸いにも、ぼくの足の親指は折れていた。
「折れてますね」と言われた時、嬉しさのあまり「えっ、本当ですかっ?」と高い声を出してしまい、不信な顔をされたので、「ああ・・・折れてたかぁ・・・」とガッカリしたふりをしなければなからかった。
待合室に行き、上司に「あのぉ・・・なんか折れてるみたいです」と言うと、なぜか爆笑が帰ってきた。釣られてぼくも大笑いした。不信な奴の烙印は避けられなかったかもしれない。これから通院するのに。