タダの話

明日は土用のうなぎの日だ。うなぎと言えば面白い昔話がある。

昔々あるところにうなぎ屋から漂ってくる香ばしい香りをおかずに白飯を食べている想像力ゆたか君がいたのだが、ある日、ゆたか君の家にうなぎ屋の店主が尋ねてきた。
「あなた、ウチの店から出る匂いをおかずに飯を食っているそうじゃないか。いままで嗅いだ匂いの分、金を払ってくれないか」
ずっと頓着せずに、いやむしろ積極的に垂れ流している匂いだったくせに、ゆたか君の存在を知ってからというもの、うなぎ屋の店主はどうも面白くなかったのですね。

「いいですよ。少し待ってください」
ゆたか君はそう言って奥へゆき、すぐに銭のたっぷり入った袋をもって(用意がいいな)再びうなぎやの店主の前に現れると、銭袋を2,3度揺らしてこう言いました。

「銭の音が聞こえましたか?」
「聞こえたが、それがどうかしたかね」
「そうですか。ではこれで、うなぎの匂いの分の金は、たしかに払いましたので・・・」

ドドーン(衝撃を表す音)。