注意できない理由

PC室でPCを触っていたら、ぼくの隣の端末のモニタを囲んで5,6人の男女が大騒ぎし始めた。話から察するに飲み会などで撮った写真を見ているよう。注意しようと思ったが、できずに1、2分たってしまったころ、注意するのを諦めた。こういう注意はすぐにしないと機会を失う。こういうことがあるたび、「次からはうるさいと思ったらすぐ注意しよう」と決意するのだが、いざ本番となるとうまくいかない。
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東海林さだおの漫画に、髪の長い新入社員に「うちはお堅い会社だから、髪を切れ」と注意しなければならないハゲの上司の心理をかいたものがあった。その会社では男は髪を短くすることがルールなので、「髪を切るように」とはっきり言えば良さそうなものだが、ハゲの上司はそれが言えない。「髪を切れ」と言うと、フサフサの髪を妬んでいると思われるかもしれないからだ。
このハゲ上司は、悩んだ末「髪を切れ」と注意する。するとやはり、職場の女子社員たちは「ハゲだからフサフサが憎いんだ〜」という。そこでハゲ上司は、死にたいくらい悔しいという顔で、「ちっ、がっ、うー!」と叫ぶ。
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そうなのだ。違うのだ。
この場合、ハゲの上司が己のハゲに劣等感を持っていたかどうか、そしてその程度がどのくらいかということは問題ではない。そんなことはまったく関係なくて、「劣等感を持っていると思われる」ことがこの上なく嫌なのだ(ということはつまり劣等感があるということだろ?と、いっしょくたにしてしまう人は意地悪な人である)。


そして話はもどるのだが、今回ぼくが注意できなかったのは、ぼくが、若者が男女混合で騒ぐ、ということへ劣等感を持っていたからではなく、劣等感を持っていると思われるのが嫌だったからである。きっとそう。