夏のせいかもしれない

山君の電話で目がさめた。「昼飯を一緒にどう?」という連絡だった。とりあえず断わって、飛び起きて、シャワーを浴びた。わずかに迷ってから山君に電話した。まだ食べていた。そして「今日のメニューはハンバーグだ」というのが押しになって、すぐ部屋を出た。
徒歩7分の道中はタオルを使って髪を乾かしながら早足に歩いて、5分くらいで到着したと思う。山君から電話を受けてから20分も経っていない。やればできるものだ、と思った。


いつも通り腹が破裂するほどの米とサラダを食べて、そのあと、コーヒーゼリーが出てくる。自家製だ。きっとおいしいのだろうがあまり味わって食べたことがない。
今日は店ががらがらだったので山君と店のオバサンのトライアングルトークが弾んだ。多分そのせいだと思う。食事が済んでコーヒーも飲み終わった時、ぼくは、コーヒーカップをカウンタに戻し「ごちそうさま」と言うと、「じゃあまたきます」と言って山君と店を出ようとした。
「あら、お金ちょうだい」
オバサンにそう言われてからも一瞬、「何が?」という感じだったので、そんな自分に、狼狽した。朝ご飯を食べに台所に下りてきたような気分になっていた。たぶん、それで良いのだろうが。
すぐ可笑しくなったし、あまりたいした問題ではないが、なんとなく、「とうとうここまで来たか」というような感じがした、と言っておくと良いような気がする。
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(余談)
山君のハンバーグにはハーブがそのままの形で混入していた。店のオバサンによると「あまり食べるものではない。ちなみにそこらへんに生えているのをとってきた」との話だったが山君はすぐ一口食べた。そして「何でもない」と言う顔をしてぼくに残りを勧めたので「絶対にひどい味なんだ」と思って拒否したら、山君は1人で全部食べた。これはいつか騙すための伏線である。こう考えていくと人に騙される確立が減ると思う。しかし人に信頼されないという諸刃の剣。素人にはお勧めできない(古ー)。