第二章「おれの考え」

前回第一章「わたしの考え」
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俺も考えてみたよ。
前の人の読んでみたけど、なんだかなぁ、双子で入れ替え?ありえないでしょ。普通ばれるって。ミステリィの読みすぎ。それとも山本文緒の『ブルーもしくはブルー』を読んだ直後だったとか?あれって結末どうなったんだっけ、ばれたのだっけか、忘れたな。

それはそうと、俺はあの「妊娠した」っていう嘘は、大学受験で言う「東大を受けた」と同じようなものだと思ったよ。もし大学に落ちて浪人する時「東大に落ちまして・・・」っていうと、「東大じゃあ仕方ないか」っていう見られ方しない?例え下手でごめんだけど。
つまり・・・たぶん彼女が次につく嘘は、
「流産した」
これだね。
一回も妊娠しないまま、ずっと結婚生活を続けるっていうのは辛いものがあると思うな。「子供ができない体なの?」っていう疑問がずっとつきまとうから。でも一回でも妊娠しておけば大丈夫。子供が産めなくなる年齢までごまかしごまかしやっていけると思うよ。
釣りと同じ。ずっと釣れないと、もしかしたら魚いないんじゃないかって思って虚しくなるけど、一回でもひっかけておけば、全然違う。結果として1匹も釣れなくても、一回でもひっかけたか、一回も引っかからなかったかで違うと思うなぁ、俺は。


この計画が「史上初、空前絶後」のものだとは思わないけど。でも彼女にとっては、すごい計画でしょ。これからずっと騙していくんだから。

そうそう、「ある人物」ってのは医者。診断書を書いてくれる医者が見つかったんだろうな。その医者が夫と、それに彼女も騙してくれると思う。2人に「流産したっていうお守り」をくれるって言った方がいいかな。嘘だってわかってるけどあると落ち着くでしょ、お守りって。