パ↑ンツとパンツ

いつからズボンのことをパンツというようになったのだろうか。声を大にして言いたいが、これは明らかにおかしなことである。せっかく区別がつくようになっていたものを、どうして同じ名前で呼んでしまうのか、理解に苦しむ。
仮に「味噌汁」が「ご飯」と名前を変えてしまったらどうだろうか。困ることはあれ、いいことなど一つも無いではないか。
「お母さん、ご飯おかわり」(お米の方の「ご飯」)
と言って味噌汁を持ってこられた時のことを考えてほしい。
(味噌汁が欲しいのにご飯を持ってこられる場合もあるだろう。なぜメシ時に賭けをしなくてはいけないのか。3回味噌汁が来て、次こそはご飯だろうと思ってもまた味噌汁ということもあるかもしれない。味噌汁でお腹いっぱいになるのは嫌である)
それとも、パンツのように発音で言い分ければいいのだろうか。「ご↑飯」と「ご飯↓」など(適当)。それなら別に問題は無さそうだ。
―――
しかし文章中では困るだろう。ぼくはこれを言っているのだ。
次の文を読んで欲しい。


「うわっ、パンツにコーヒーこぼしちゃったよ」
そう言うと、梶原は急いでパンツを下ろした。
どんな絵が浮かぶだろうか。梶原君は一体どんな格好になってしまったのだろう。最悪フルチンの可能性もある。というか、50%そうである。
さて、次の展開はこうなる。

「キャー、何やってんのよ!」
石塚はそう叫ぶと、梶原のパンツを上げた。
これでは石塚が男なのか女なのか、あるいはオカマなのかが判らないではないか。
ではなくて、一体どっちの「パンツ」だかわからないではないか。これは重要な事である。もし本物のパンツ(ブリーフなど)であった場合、石塚さんはフルチンを見たことになるし、ズボンであった場合ブリーフしか見ていないことになるのだ。
それがどう重要なのかというと、この後石塚さんが、
「梶原のモノもたいしたことないわね」
とでも言った場合、ブリーフ越しのモノをみてそう言ったのか、一糸纏わぬモノを見てそう言ったのかが判らないのである。これがどう重要なのかの説明は省かせていただくが、とにかく状況がわからない。わかるようにするとしても、「パンツとはブリーフのことである」などの説明が必要になってくる。これはとてもめんどくさいことではないか。一体誰がどんな意図で、ズボンのことをパンツと呼ぶようにしてしまったのだろうか。
しかし、その理由がわかったとしても納得はしてやらない覚悟である。