いろんなバージョンがある

「釣り竿〇〇円」「長靴〇〇円」など買物をいくつかしたあと、
「お金で買えない価値=プライスレス」
と締めくくるクレジットカードのCMがある。
品物に幾ら幾らかかったが、それを使って楽しんだ時間は貴重であり、お金にかえられないという意味だろう。
それはわかるのだが、このCMを見るたびどうも釈然としない気持ちになる。「お金より大切なものを得るためにはお金がかかる」というのは分かるし、それはある程度仕方ないと思うのだが、ちょっと工夫が足りないのではないか。このCMでは、子供と釣りに出かけるとなると、父親がすぐに新品の釣り竿を買い与えてしまうんである。ここがぼくの感覚と違う。
相手は子供である。新品の竿なんて買ってやってもすぐに壊すかもしれないし、なにより飽きられてしまったら二度と使う機会は無い。それをちょっとでも考えれば、子供に新品の竿を買い与えるなんてことは、まるでギャンブルだと気づくはずである。それでも買い与えたいんだ、という人は勝手にしてほしい。どうせなら競馬やパチンコなどのギャンブルも一緒にやって、せいぜい散財して身を滅ぼすか、運が良ければ一儲けすればよい。その時はちょっと分けてもらいたいものである。
とにかく、釣竿なんて最初は押入れに眠っている古い竿を使わせるか、それが無ければ、竹にたこ糸でも吊るしておけばよい。エサも現地調達でいいだろう。それでしばらくやらせてみて、子供が興味を持ったと思った時はじめて安い釣り竿を買い与えてやるべきなのだ。
最初は父親の立派な竿をみてヨダレでもたらさせておけばいい。そういうことがあれば、安い竿でもかなり嬉しく思えるものだ。この嬉しさはお金より大切なものである。プライスレス。
お金をあまり持っていないせいで大切にしようが無い人でも、それより大切な何かがこうやって得られるのは素晴らしいことである。
―――
「たこ糸 15円」
「竹 0円」
「ミミズ 0円」
―――
得たもの
「釣った魚」
お夕飯まで手に入った。