あるガン患者とその友人

「ぼくはガンなんだ」
「えっ、本当?」
「うん。だって医者に『ははは、ただの胃潰瘍ですよ』って言われたんだ。だからぼくはガンなんだ」
「ふぅん。でも医者は胃潰瘍だって言ってるんでしょ?」
「いや、胃潰瘍じゃなくて『ただの胃潰瘍』って言われたんだ。だからぼくはガンなんだよ」
「ははは。『ただの胃潰瘍』ね。でも本当にただの胃潰瘍かもしれないよ?」
「でも、本当にただの胃潰瘍だったら、ぼくがいくら、『これはガンなんでしょうか?』って心配しても、『っさいボケ。何回も胃潰瘍や言うとるやろ。次つっかえとんねん』って言われると思うんだ。それなのにあの医者スカシて『ははは、ただの胃潰瘍ですよ』って。いくらなんでも『ははは』は無いだろう。からぼくはガンなんだ」
「へぇ。でも100%ガンって決まったわけじゃないじゃん。医者が胃潰瘍って言ってるんだからマジで胃潰瘍かもしんないじゃん」
「いや、この間家族の前で、『ぼくはガンなのかなぁ』って言ってみたんだ。そしたら妻が『ばっかねー、そんなわけないじゃな〜い』って言って僕の背中を叩いたんだ。これは絶対ガンだと思った」
「だからぁ、そんなことで絶対にガンだってわかんないじゃん。他の病院で検査受けてみたら?」
「いや、ぼくはもうガンだってわかってるから、そういう検査とかはいい」
「・・・。じゃあもうどうしようもないじゃん。一体何が言いたいの?」
「だからぼくはぼくの事をガンだと思っているということを言っているんだけど」
「だからーーーー!!まだガンって決まって無いじゃん!検査受けにいきなよ!」
「いや、そういうのはいい」
「なんじゃそりゃ!」
「というか、君に最初からアドバイスとかは求めていないんだけども」
「っさいボケ!はよシネ!」
END