昼食時

今日は山君と岩君と一緒に昼飯を食った。この2人とは高校から一緒なもんだから、話す事がぱたっとなくなると、昔話がはじまる。僕と山君2人きりとか、僕と岩君2人きりならそんな事にはならないのだけれど、3人となると、急に、いちいち発言を吟味する必要がでてきて、だんだんそれが面倒になってくるのか、話が止んでしまう。そうすると、「ホラ、高校のときすぐキレる木村先生ってわかる?」とかいう話になる。わかる?たって、わかるに決まってるんだけど、そこは「木村はわかるし木村にまつわる話もあらかたわかると思うけど何か目新しい情報でも?」とは言わないで、「わかるわかる」という相づちだけをうっておく。そうすると、首尾よく昔話が始まるわけだ。今回は定番中の定番、木村といえばこれ。
「教室にあったさぁ、本棚を、誰かが座ったかなんだかしてへこませたんだけど、それを木村が見つけて、キレちゃってさ。たまたま機嫌が悪かったんだと思うけど、「これやった奴はだれだ!」って「やった奴が名乗り出るまで帰さないぞ!」って怒鳴ったの。でも名乗り出る奴なんているわけないじゃん。だから木村ますますキレて、「こうやって、こうやって、こうやって壊したんだろう!」って言いながら、本棚に思いっきりケリ入れて、吹っ飛ばしてさ。そしたら、さっきまでチョイへこんでただけで、まだ使えるような感じだったのに、木村の蹴りでデッカイヒビ入っちゃって、めちゃめちゃになったんだよね。そんなことやっといて、木村は最後に「本棚壊した奴は弁償してもらうからな!」って言ってんの。言って気が済んだのか俺たちその後すぐ帰れたんだけどさ、帰り道に皆で「壊したのは木村だろ!」って。だから木村は本当にバカ」
ところでこの話、一生の間に何回するんだろうか。他にも、「ノリちゃん自転車ごと堀に落ちる事件」とか「ヤス君勘違い事件」とか「便器の達人」とか(列挙されても訳がわからないだろうが)、一生の間に何十回、下手したら百何十回するかもわからない話がいくつもある。しかも全部どうしようもない話だ。どうしようもないとは、それを話しても何も生み出されないということで、生産性が無く、同じビデオテープを何回も見ているようなもので、つまり、糞の足しにもならない。その割に、毎回腹を抱えて笑ってしまうのだが。
ところで、あんまりバカすぎる話で笑い転げるのもどうかな、と、昔はよく思ったものだ。かっこつけたい時期には特にそう思った。女子にもてたいわけである。中学時代とかは。
バカ笑いばかりしてると、女子からはあまりよくない評価を下されるのだ。「バカっぽい」とか、「子供っぽい」とか。その一方で、「IQ低そう」と言ってくれる人もいたし、かと思えば「レベルが低い」などと言う人もあった。大分類すると、女子の僕らに対する評価は二分していて、「バカ」という人と「バカみたい」という人に分かれていたと思う。
今は別にもてたくないのでどんどん馬鹿笑いしようと思う。