飯癖の人たち

僕の知り合いには飯の食い方に変なこだわりを持っている人がけっこういる。
まず山君。彼は食事中に水を飲まない。飯を全部食い終わってはじめて水を飲むのだ。僕はこれに気付いてその理由を聞いてみたら、こう言った。
「だって水で味が薄くなるじゃん」
・・・。どうやら口の中にまだ飯が残っている時に水を飲むと、味が薄まると言いたいらしいのだ。これについては相当喧嘩をした。一緒に飯を食えないような軽い絶交状態にもちょっとの間だけどなった。
山君が、それを自分の変なこだわりだと自覚して、水を食事中に飲まないのではなくて「飲めない」くらいに思っていたら問題は無かったのだが、やっぱりそうじゃなかったのだ。山君は自分の性癖ならぬ「飯癖」を指摘された時、僕にこう言ったのだ。
「コムギコ君(僕)はよく水飲むけど味薄くなって気持ち悪くないの?」
これには怒髪天をついた。思わず「バカ!」と口走っていたくらいである。もちろんそのあとには色々言ったのだが。
ああ、それにしても、まだ口の中に少しでも飯が残っている時に水を飲むと味が薄まり気持ち悪いというのはどういうことか。これがいわゆる「味がわかる」ということなのか。味のわからない僕は、まだ口の中に飯が残っていてもドンドン水を飲み、飯の味を薄め、山君に言わせると気持ち悪くなったそれを飲み込んでうまいうまいと言っている、ということになる。バカにするにも程がある。
食事中に水が飲めないのは君の単なる飯癖ではないのか。まぁこれが性癖の話で、山君にこう言われたら怒ることも無い。
「え?コムギコ君はイク時自分の乳首をギューッ!っとつままないの?アレやらないと気持ち悪くない?」
つままないつままない。気持ち悪くない。「むしろ毎回気持ちいいが何か?」とでも言ってやろう。それにそこまで言うなら今度からつまんでみてもいいくらいだ。それが「飯癖」になるとどうも腹が立つ。これは一体何か!!!!???僕の生涯のテーマになる事必至。

もう一人飯癖を持っている友人がいる。村田君である。村田君とは小中高と一緒で大親友といってもいいくらいのつき合いをしているが、そのぶん多くの価値観の違いにぶつかり、そのたび喧嘩をした。そして毎回ちょっぴり絶交状態にもなるのだが、お互い他に友達があんまりいないものだからすぐ仲良くなる。頑固になっているのが恥かしかったのかもしれない。たいして意固地になる問題でもないのに意地を張っているのが僕らの間で「恥ずかしいこと」だったのだ。いい友達だと思う。今でも別の大学に通っているが、時々交流がある。近々一緒に温泉に行く予定である。
とりあえず今回は村田君の飯癖のことを一つ言いたい。これは中学生の時だった。村田君の家に遊びに行くとき、気を利かせておやつを買っていったのだ。明治のアーモンドチョコレートである(僕が好きだから)。それを持って村田君の家にいったのだが、村田君は僕の持ってきた明治アーモンドチョコレートを見てこう言った。
「僕チョコレートってチョコレートだけの奴しか食べられないんだよね」
これは怒髪天をついた。思わず「バカ!」と口走っていたくらいである。もちろんその後は烈火の勢いでアーモンドチョコレートのうまさについて語ったのだが。
村田君はなんと、チョコレートはチョコレート100%でないと食べられないというのだ。これはさっきも書いたが、よくよく聞くと、「高級チョコレートだったら少しくらい何かが入っていても食べられるけどね」とのことである。僕らはその日大喧嘩をした。
というわけで、飯癖のうらみは恐ろしいのである。もしかしたら僕にコンプレックスかトラウマか何かあるのか。コンプレックスは確実にあるが・・・。