吉本ばなな『体は全部知っている』

この本は、吉本ばなな「体は全部知っているよなぁ」と気付いた本だ。あとがきによると、吉本ばななは10代20代とやりたくない仕事をしストレスをため、お酒も沢山のみ、運動もせず、体のことなどかえりみることもなく、頭でっかちに育ったそうだ。「特に大学生の時などは、老人並みの体だっただろう」とも言っている。ふうん

しかし、吉本ばななは色々な人生経験を通して「体は全部知っているよなぁ」ということに気づき、それからは体を大事にし始めた。その結果、「今は30代後半だが若いときより体は元気だ」そうだ。よかったね
唐突だが、世の中は二つの人間に分けることができる。ちがうかもしれないが、こう言うとなんだか食いつきがよさそうなのでいわせてほしい。
世の中は、「吉本ばななが好きな人間」とそれ意外の人間にわける事ができる(「吉本ばななが嫌いな人間」と二分化しないところが僕の弱気がでている)。ちなみに僕は「それ意外の人間」だ。
僕はこの本を読みながら、100本以上血管を切ったのではないかと思えるくらいに頭に血が上った。いや、エッチな描写に興奮したのではない。というかそうだとしたら血は別のところに集まるのではないだろうか。冗談はさておいて、僕はこの本を読んでいる間、常に怒っていたのだ。ぷんぷん!


私は、あ、ちょっとしたごほうびだ、と思った。
会話はゆっくりと、なめらかになる
「思い出させてくれてありがとうございました。とても大切な思いでだったんです。」
私はよく、自然の中にいるとあれ?なにか柔らかく包まれているみたい、と思うことがあった。卵みたいにそっと抱かれている感じがする、と思った。


これは『体は全部知っている』から抜粋したものだ。本当は一番腹が立つのはセックスの描写なのだが、それは2度と見たくないのでやめておいた。これをみて、僕が何に怒っているか分かるだろうか。いや、これだけではきっとわからないとおもう
そういえば、リリーフランキーがいつかこういうことを言っていた。細かいところは間違っているかもしれない。
「僕は人のきれいなところと汚いところの両方を表現したいんだよね。きれいなところだけ切り取る事もできるけど、それだけが人間じゃないしね。あの人かわいそうだなと思った後にすぐ、あいつぶっ殺してーとか思ったり、いい話に感動した日でもオナニーするでしょ、人間って」
そうなのだ。そういうことなのだ。
たとえば、吉本ばななの文でこういうものがあったとしよう。


「それを思い出したとき、一瞬頭の中が真っ白になった。そのままふらふらとした足取りで家にたどり着いた」


このままではまた血管を切ってしまいそうだが、もしこうだったなら、僕は怒らないかもしれない。


「それを思い出したとき、一瞬頭の中が真っ白になった。そのままふらふらとした足取りで家にたどり着いた。そしてありがたいことに、家に入ってすぐに便通の兆しがあった。このチャンスを逃すまい、と、急いで便器をまたぐと、噴火のような勢いで私の菊の門からうんこが放出された。ああすっきりした」


これなら見逃してやろう
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もう分かったと思うが、僕は「吉本ばななが好じゃない人間」の中の吉本ばななが嫌いな人間だ。なら何故読むのか、という質問には、自分が吉本ばななが嫌いだということを確かめるために読んでいると答えると思う。
今調べてみたのだが、僕は吉本ばななの本を9冊も読んでいる。本当はもう1冊あるのだが、それは途中で読むのを放棄してしまったので加えていない。一応教えておくと、それは英語版の『キッチン』だ。ローマ字読みでキットチンとか書くあの『キッチン』だ。腹が立ちすぎて読めなかったのではなくて、単に英語が苦手なだけだ。みなまで言わせないでほしい
・・・僕の記憶が正しければ、最初に読んだ吉本ばななの本は、日本語の『キッチン』で、それはとってもおもしろかった。しかし、僕は成長するにつれ、『キッチン』を面白がっていたときの自分の心理状態を嫌悪するようになった。何かを嫌うということは、それが得だからそうするわけだ。この場合は、当時の心理状態を許してしまうと、今の僕に何かの不都合が生じたのかもしれない。というか何かを嫌う動機の半分以上はそうだろう。
またいつか、吉本ばななを楽しく読める日がくるかもしれない。それは僕がもう一つ成長した時だ。ということでどうだろうか


体は全部知っている
吉本 ばなな

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