僕は今、ワインをゆっくり飲んでいるが、ところで、ほぼ毎日、大学の中庭でサッカーをしている人がいる。中庭は、小さな芝生の周りを数個のベンチが囲むように配置されているだけの、こじんまりとしたつくりになっている。狭いのでサッカーをされると、ちょっと、というかかなり邪魔なのだが、それでもしている人たちがいる。だいたい、チャラチャラした人たち(不良、と言ってもよかったが。他にいい表現が思い浮かばない)がやっている。
昨日の18時に、2階の廊下から、ライトに照らされた人気の無い薄暗い中庭をみたら、サッカーをしている人たちがいた。ガリガリした人たちだ。うちの大学は、チャラチャラした人とガリガリしたひとと中肉中背のひとに、割と、極端に分かれる。ナンパ、普通、オタクと言ってもいいだろう。そう大分類すると、オタクの人たちが、薄暗い中庭でサッカーをしていた。
僕はその様子を、だいぶ長い事、といっても、廊下に立ち止まるという不自然さを考慮した「長い事」だが、長い事、見ていた。彼らは全くサッカーボールを蹴れていないのだ。スカッ、スカッと、見事に空振りをする。一瞬、パフォーマンスかな、とも思った、というのはただの皮肉だ。ただ単にサッカーが苦手なのだ。きっと球技全般、スポーツ全般が苦手に違いないと僕は勝手に思う。それはきっと正解だ、と勝手に思う。
なぜ彼らは、わざわざ薄暗くなってから中庭でサッカーをしているのか。その理由を僕は勝手に想像する。それはたぶん合っている。僕は彼らが好きだ。チャラ男より「多少」サッカーが下手だとしても。
これを書いている間に、マグカップになみなみ注いだワインが5分の1になった。