ハードディスクのDみたいなもんか

車で家に帰る途中で雨が降ってきた。窓ガラスについた水滴が、左腕にホクロのように影を落としたのを見て、一瞬なにかがよぎった。
それは、山間を走る途中、追い越し禁止(正しくはハミ出し禁止だが)のオレンジの中央線で小さな獣が倒れていたときや、信号待ちをしている自転車の女の子が初恋の人にそっくりであったりしたときなどにもあり、普段は使わない回路が、カリカリと動き出しそうな気配を見せる。
今のぼくは昔に比べてとても安定している。しかし必要かもしれなかった気配を殺し続けたツケは、もうすでに回ってきている。それは、周りの人間からもたらされるものだけではなく、自分自身を疑うものでもあった。