悲しいことがあると

別れ際が苦手だ。今生の別れじゃなくても、誰と別れる時でもそう。大好きな人と付き合いが終るという一大事から、寝る前にパソコンを切るという小さな別れ(今日という日の別れ)まで苦手である。筋金入りの寂しがりやだ。
感傷的でもある。これも筋金入りだ。小さな事で悲しくなる。
ぼくは、社会人になってから、怒られて泣いたことが2回ある。怖いから泣いたんではない。目の前の人がどうしてそんなに怒るのかがわからなくて、それが悲しくて涙が出てくるのである。また、自分が怒った後にも泣きそうになるし、怒っている人を見るだけでも、けっこうやばかったりする。
昔の自分を思い出して、どうしてあの時愛されなかったのだろう、とか、なんて健気だったんだろう、と思ってやばい時もある。
それに、小さくて弱いものがやばい。犬は大型犬が好きだ(安心できる)。小猫とか小犬とかは、やばすぎる。ハムスターとか、もってのほかである。できれば2度と見たくない。
子供も苦手だ。幼稚園くらいの子が集団で歩いているのを見るだけで悲しくなるのだ。たぶん、同情してしまうのだろう。何にも自由にならないで、かわいそうに、と思う。その頃の自分がそうだったからだ。どう考えて良いのか全然わからないまま次々に悩みを抱え込んで、苦しいことばかりだった。
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真夏の昼間。5歳くらいだったろうか。アイスを食べながら、公園に向かっていた。その途中で、新しく家を建てていた。
それをぼんやり眺めていたら、そこの大工が、「いいなあ、おいしそう」と言ったので、ぼくは家の戻って、台所の椅子に乗っかり、初めて自分で冷凍庫を開け、アイスを持って大工の元に駆けて行った。大工はびっくりしていたけど、ぼくは嬉しかった。その日はすごく暑くて、誰でもアイスを食べたくなるような日だったからだ。ぼくも美味しかったから、その大工もきっと美味しく食べるんだろうなぁ、と思っていたと思う。
なんて健気なんだろう。これを思い出すといつも泣きそうになる。