刺身売り場の防波堤

ここ最近、刺身がほとんど売れない。
自慢だが、ぼくは刺身には自信がある。綺麗だし、スピードも早い。最初に誉められたのが刺身だったので、良いものを作ろうとずっと工夫してきた。それが今に繋がっている。
何が悪いのかと色々考えた。お客さんが品揃えにマンネリを感じているんじゃないかと思って、品揃えを変えてみたり、いつもは600円以上の刺身がメインだが、400円くらいの価格帯の刺身を増やしたりした。それでも売れ数はあまり変わらなかった。
それが今日、いきなり刺身の売上が回復した。魅力のある刺身(おいしくて綺麗で安い)も、あまり魅力の無いと思われる刺身(高くて見た目が悪くておいしく無さそう)も同じくらい売れた。ぼくの自負って何?と思ってしまう時だ。いくら魅力のある商品を作っても、売れなければ自己満足に過ぎない。
でも、ぼくはこれからも、1パックごと集中して刺身を切っていきたい。同じスピードで同じ原価を使って1パック作るなら、絶対にその方が良いと思う。刺身はスーパーの商品の中では高級品である。だから、満足して買って帰って欲しい。
ぼくなら満足して買いたい。これでいいや、という買物は、どこかみじめで、財布が気になる買物だ。そうじゃなくて、これがいいな、という買物をしたいし、させたい。


―――(以下おなじみ無関係ゾーン)
これでいいや、というみじめな気持ちは、人間関係にもある。この人がいい、という気持ちになりたいし、そういう気持ちにさせたい。財布が気になる買物と同じく、時間が気になる関係もみじめだからだ。お金は無いが、貧乏くさいのは嫌いである。