学食話

別に言わなくてもいいのだが、言うとワンテンポ向こうの仕事が速くなるので、いつも言うようにしている。学食のオバチャンに食券を渡すときの話である。ぼくはいつも、食券を渡しながらメニューの名前を呼ぶようにしているのだ。
今日は「ハンバーグカレーおねがいしああ〜っす」と叫んだ。
こうすることによって、オバチャンは食券を確認する手間を省いて、即座にハンバーグカレーをよそう体制に入れるのである。食券はオバチャンに直接手渡しされるのではなく、カウンタに置く形式なので(ここが味噌だ)、下手をすると2秒ほど違うのではないかと思う。
だが別にその2秒が惜しいわけではない。単に叫びたいのだ。

元囚人の手記の中に、

「朝の点呼では必ず大声を張り上げて返事をした。大きな声を出していいのはその時だけだったから」

というようなものがあったが、ぼくのも、これと似たようなものだと思う(ぼくの場合そもそも声を出す機会自体ほとんど無いが)。


トレイを戻す際には、「ゴチサマシター!」と叫ぶ。学食では、異様に愛想がいい人だ。