意味のリズム

意味が無いことをしようとしているのに、意味を見出したがりだから、たいていのことに意味や解釈をつけることが可能になってしまった。これは、意味のないことをするのがかなり難しくなったということだ。
コツがないわけではない。例えば、できるだけ考えないようにしていて、やる時はスッとしてしまうのが良いと思う。気にしすぎるとだめになる。部屋の中を飛び回っている虫を退治するような感覚でいれば良い。あれは、ずっと警戒して、隙あらば叩き落としてやろう、という心構えでいると何時までたっても叩けないではないか。射程範囲内に入る気配さえない。
いったんは忘れる必要がある。しかし忘れようとするだけではいけない。ほかのことを考える。そのうちに忘れる、というのが理想的だ。そして次に思い出した瞬間が、それを実行するチャンスでないといけない。この呼吸が難しくていつも失敗する。
一瞬なら意図が介在しても問題は無い。瞬間なら、無いのと同じだからだ。瞬間は夢だ。
たとえば、理想的な速度で考え事をしている時はそれを自覚できない。突然、いま夢中だったな、ということに気がつく。
そこから思考は速やかに拡散していく。それはあまりに速やかで、かき集める気にならない。
凄い速さで倒れていくドミノを呆然と見ているような、そんな感覚。あっと思ったときにはすでに間に合わない。そしてそのあとは、ドミノなんて無かった、そんな気分になるのだ。


ドミノなんて無かったよ。
夢でも見ていたんじゃない?


ほんとうに一瞬なのだ。