おいしく作る秘訣は「お好み焼きのもと」を使うことです

先日、山君と花見をした。といっても、桜の咲いている近所の公園で昼飯を食っただけだ。お酒は無い。ところで、男2人で公園でメシという風景はどうなんだろうかとか考えてしまうが、考えないことにする。
その日はお互いが飯を持ち寄ることになっていたのだが、ぼくは山君を信用して何も準備していなかった。そして山君は期待通りたくさんのご飯をもってきた。サンドイッチやフランクフルト、そしてお好み焼きまで持ってきてくれた。
以前ぼく等は、お好み焼きに関して議論を戦わせたことがある。「絶対に俺の作ったやつがおいしい」「いや俺のだ」「俺のに決まっている」「絶対俺だ馬鹿」「うるさい馬鹿」など、議論にならなかったのを憶えている。ぼくはその決着をつける日を連日夢にまで見ずにずっと忘れていたのだが、今日のこの機会を逃す手は無いと思い、山君に提案して急きょ念願の「お好み焼き対決」が実現した。
さっそく近くのスーパーで材料をそろえると、ぼくはスペシャルな(なんと豚肉が入っているのだ)お好み焼きを作り始めた。山君には文庫本を預けておいて、車の中で待ってもらった。部屋に入れなかったのは、料理している姿を人に見られるのが嫌いだからだ(見られると失敗しそうな気がする)。それに、部屋を見られるのはもっと嫌いである。
1時間後、お好み焼きは無事に出来上がった(山君は本を15ページも読み進めた)。
対決は、いつも行く大学そばの喫茶店で行なわれた。店主のおばさんと、その時いた客のおばさん2人が審査員だ。
結果はぼくの勝利。理由は「暖かいから」
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勝ったのにあまりうれしくなかった。これは、条件がフェアでなかったのもそうだが、そもそも山君が勝負するつもりでお好み焼きを持ってきていなかったためだろう。こんな勝利は、だらんと手を広げている人に対して急に「じゃんけんぽん!勝った〜」とやるようなものだ(相手が悔しがれば少しは嬉しいものだが)。
ちなみに、別の友人にこの対決について話すときは、「山君に勝った」と事実だけを伝えることを心がけている。