寝る寝る寝るね

さっきまでどうしていたか、どう退屈ではなかったのかと、思考を遡った時は、止まっている。止まりながら、次に、退屈は認識して退屈たると、退屈をまぎらわすために、わざわざ確かめてみても、止まっていることに変りはない。とにかく、走っていた、ということに気がつくのは、いつも、止まった時だ。ところで、後ろから殴られた事がある。直後は体が動かず、倒れたまま、じゃりを見つめていた。その間、とくに悔しさは感じず、この状態は夢に近い、などと考えていた。目のまえを蟻が通る。体が起き上がれるようになっても、まだ寝そべって、私を殴った人の事を思った。私は倒れてから、まだ一度も動いていないはずだ。少し気の毒になりつつ、わざと、いっそうのことじっとしてみた。しばらくすると、このままずっと、誰も私の肩をたたかないのではないか、ということを考えてしまった。そうなるともう、立ち上がるしかない。次は、じゃりだけをみて、走り出した。駆け出しはいつもスピードが出る。それに驚くほど体が軽くて、いつまでもそれを続けていられるような気がするものだ。しかしすぐに、疲れの予感のようなものが襲ってきて、この足はいつか止まる、と知る。こうして限界が体に刻まれていくのだ。今の私も疲れの予感に襲われている。この文がいつか止まると知ったのだ。しかも、これから割とすぐ後である。そうなって止まるとくやしいので、そろそろ自分からこれに幕を下ろす事にする。