自動車学校

夏がくれば思い出す〜♪という歌があったように、季節は色々な記憶を呼び覚ます効果があるようだ。僕はこれを、「区切り効果」と名づけることにした。「1年前」、という漠然とした全体を思い出すよりも、「去年の夏」という区切られたものを思い出す方が、記憶もしっかりしている。「1年前」にしたって年という区切りがあるから、「今日以前」よりはましだと思う。一日のことを思い出すのにも、「1時間目」とか「昼休み」とかの区切りがあるとだいぶありがたい。逆に、休みの日は区切りがないので、何をやっていたかほとんど思い出せない。これは、何もやっていないのが悪いのかもしれない。
複雑なものは細分化してそれぞれで理解する必要があるという意図が働いているのかもしれない。人間、あまり大きな複雑は好きじゃない。細分化し単純化して理解できる形にしようとするものだ。しかしあまりに単純なものは、その単純さを疑い、それを複雑に考えたりもする。僕の日記の場合は後者が多い。家の中にずっといると複雑な事にめぐり合う機会が極端に少ないからだ。
と、ここまで書いて何を書こうとしていたのか失念してしてしまったが、タイトルをみたら思い出した。「自動車学校」だ。
僕は去年、普通免許を取得した。8月から通い始め、12月に自動車学校を卒業したのだ。8月に集中的に通ったせいか、夏と言えば自動車学校、という風に学習してしまっていて、ただ湿っぽくて暑いというだけで自動車学校のことを思い出してしまう。なので、熱帯には絶対住まない方がいいだろう。
自動車学校について思うのは、自分が通っている時に、自動車学校についての感想を人に話したいという欲求があったとしても、できるならその話し相手は同時期に自動車学校に通っている人にした方がいいということだ。まだ通っていない人に話したとしても、なにがなんだかわからないので、最大限努力しても「そうなんだー」という答えしか返せないと思う。かといって既に免許を取得した人に話したとしても、鼻で笑われるだけである。こっちがいくら「仮免落ちちゃったよ〜」と不満プンプンで言っても、「まだそんなところにいるのか」と思われるのがオチだ。「路上教習が怖い」などと言おうものなら、軽蔑のまなざしを受けること必至である。なにしろ相手は毎日路上をブイブイ言わせているのだ。もしかしたら運転をしながら音楽を聴いたり、人と話したり、いやらしい事なんかをしているのかもしれない。加藤鷹を相手に、「昨日サチコちゃんとキスしちゃった!」と言うようなものである。いや、そっちの方がましなくらいだ。というか、加藤鷹くらいになると、僕を馬鹿にしたりはしないんじゃないだろうか。
さて、そういうこと達を沢山置き去りにして、自動車学校での体験を書こうと思う。

  • 指パッチン教官

1速から2速へ、2速から3速へ、ギアチェンジというのは難しいもので、最初はどのくらいのスピードになったらチェンジすればいいのかがわからなかった。それを教えてもらう時に担当だった教官が、僕がギアを変える度に指を「パチン!」と鳴らしていのだ。きっと、僕にギアを変えるタイミングを「パチン」と教えてくれていたのだろうと思う。でも口でも「2速っ、3速っ」と教えてくれていたので、それは余計だった。という話をすでに免許を持っている友達にしたら、あまり受けが良くなかったので、僕は不満だった。

  • 交通事故

交通事故がいかに危険か、という事を映像やスライド画像で説明してくれた授業があった。そのいくつかはすぐに「笑い」に転化できるものであったが、その話題は各自すでにし尽くしたと思うので、ここでは省かせてもらう。
免許はとりたてが一番危ない、という事を力説する教官が、「おまえ等の友達にも、免許を取ってすぐに事故を起こした奴がいるだろう、誰かそんな奴いるか?」と言ったら、一人の女の子が手を上げたので、「やっぱりいるか。どうなったんだ?その友達は。大変だっただろう」と聞いたらその女の子は、「死にました」と答えた。当たり前だがこれには笑えなかった。その後の授業に身が入ったので、もしかしたらサクラなのかもしれない。