元鞘

もう何ヶ月も前の話になるが猪苗代から新潟に戻ってきた。こちらで新店を立ち上げることになったからだ。そして何ヶ月も準備をしている段階。オープンはまだ先である。
実家に戻ったが家族が亡くなったり嫁に行ったりで、今は弟と2人で暮らしている。
昔使っていた部屋は弟が使っているので、基本ぼくの居場所は無いが、ご飯を食べたりする延長でだいたいは茶の間にいる。なんとなくお父さんの立ち位置である。
だが最近、昔祖母が使っていた部屋に寝ているので、一応はそこがぼくの部屋になっている。荷物の9割は祖母のだが。
ぼくが就職する寸前に亡くなったから、もう7年以上この状態なわけだ。早く何とかしたいが、母が家を出た今、どう片付けてよいのか全くわからない。捨てて良い物と悪いものの区別がつかないということだ。

祖父母とは18に進学で家を出てから一緒にいる時間がほとんど無かった。祖母のときは半分仕方がないと思ったが、祖父のときはそうではなかった。祖父の具合が悪いというのを知りながら、福島で仕事を続けたのは会社の命でもあったけれどぼくの意思だったから。だから祖父が亡くなった時は悔しかった。最後までぼくに会えるのを楽しみにしていた祖父の気持ちに応えてあげられなかったことと、ほとんど一人で看病していた母を助けてあげられなかったことが。
そのどちらも、ぼくの選んだことだから。昔とは違って、全部自分で選んでいるから。
今となっては仕事をクビになっても、亡くなる何ヶ月か前から帰っていればなと思うが、また同じような事態になった時、そういう気持ちでいられるとは限らない。
同じような間違いばかりして生きている。